「リベラル」と「福音派」の対立
では、現在の日本のプロテスタント教会においても存在するリベラルと福音派の対立とはどのような、どの程度のものなのだろうか?
まず、両者の使っている聖書が違う。リベラルなキリスト教会のほとんどではカトリックと共同で翻訳した「新共同訳聖書」が使われている。一方、福音派の教会では「新改訳聖書」が使われている。あなたが初めて教会を訪ねて、その教会が福音派であるか知りたいとした場合は、そこで使われている聖書を確認してみるといい。新改訳聖書が使われている教会はまず間違いなく福音派の教会である(なお、福音派の教会の中でも新共同訳聖書を使う教会が稀に存在する。一番確実なのは牧師に直接確認することである)。
新改訳聖書は、日本聖書協会が戦後に翻訳した「口語訳聖書」の自由主義神学的傾向への反発から誕生したもので、福音派の諸教派が共同で翻訳した聖書である。自ら「福音主義に立つ」と表明する翻訳委員により翻訳されただけあり、傾向として「福音派的」に解釈された翻訳がなされる特徴があるとされる。
この「福音派的」に解釈されて翻訳された新改訳聖書が一部のリベラルな聖書学者からひどくこき下ろされていて、特に我が国聖書学の重鎮の田川健三などは自著の中で新改訳聖書が原典に忠実な訳であるかについて「この新改訳聖書については、そういうことを論じる気も起こらない」とし、「その系統の信者さんたち(福音派のクリスチャンたち)がご利用になさればよろしい」と酷評している。
なお、田川健三はリベラルの新共同訳聖書についても色々とこき下ろしているので一概には言えないが、少なくとも聖書を高等批評的な見地から検証している学者からは評価されていないとは言えるであろう。
次に、福音派とリベラルの両者は、それぞれ所属している団体も違う。福音派の諸教会のほとんどは日本福音同盟(JEA)という団体に所属している。一方、リベラルの諸教会のほとんどは日本キリスト教協議会(NCC)という団体に所属している。当然のことながら、両者間において交流はほとんどない。
福音派の牧師の中には、リベラルな教会のクリスチャンとの交流すら禁じている者もいると聞く。福音派の一部の過激な牧師にとっては、リベラルなクリスチャンなどほとんど異端と同然と見えるのかも知れない。福音派的教義を厳しく徹する教会になればなるほど、リベラルな教会がトンデモないシロモノに なってゆくのであろう。(続く)
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