「伝統的なキリスト教会」とは?
例えば、エホバの証人と呼ばれる人達は、自分達こそ「真のクリスチャンである」と主張している。また、ミット・ロムニー米上院議員が一時注目を集めたモルモン教の人達も、自分達の教会こそ「自らを回復されたイエス・キリストの教会」である主張している。そして、エホバの証人、モルモン教、そして先日日本での解散命令が出された統一教会は、いわゆる伝統的なキリスト教会から「三大異端」であるとして「キリスト教ではない」とされている。
しかし、ここでいう「伝統的なキリスト教会」が一枚岩ではないのも一方の事実である。キリスト教の歴史を見ればわかるが、キリスト教会は分裂を繰り返していて、まずは11世紀に東西両教会へ分裂し、続けて16世紀に起きた宗教改革で西方教会がカトリック教会とプロテスタント諸教会とに分裂した。腐敗したカトリック教会から離脱(カトリックの側からすれば破門)したルターらの興したプロテスタント教会は更なる分裂を続けながらも世界中に広がり、今ではアメリカを中心とした欧米諸国の一大勢力となっている。
ここでプロテスタント諸教派のメジャーなところをご紹介しておくと、宗教改革の立役者のルターが興したルーテル教会、ジャン・カルバンを源流とする改革派・長老派教会、スイスを中心にして興ったバプテスト派諸教会、イギリスのジョン・ウェスレーを源流とするメソジスト教会、20世紀初頭にアメリカで興ったペンテコステ派諸教会などが挙げられる。以上の諸教派がアメリカ新大陸の発見の頃に国を超え、それぞれの国や地域で独自の歴史を作っていった。ちなみに我が母校の明治学院は、アメリカの長老派教会が日本へ送った医療使節団を源流としている。
なお、カトリックから別の理由で離脱した聖公会については、聖公会みずからがカトリック教会とプロテスタント諸教会の中間に位置しているとしているので、ここではプロテスタント諸教会には含めない。
では、プロテスタント諸教派が一致しているかというとこれも全然一致していなくて、逆に一致どころか対立と分裂を繰り返している。 プロテスタント諸教派がなぜ分裂するのかについてはそれについての神学的な知識を持たない私には説明が困難であるが、一キリスト者の意見として言うと、根底に神学上の基本的な対立があることが原因であることは間違いないと思われる。
多分、プロテスタント諸教派における神学的な相違は、諸教派の歴史的対立もさることながら、神学的解釈とりわけ聖書に関する解釈が、考古学や歴史学の進歩や発達とともに多様化してきたことと無関係ではない。中でも対立にもっとも大きな影響を与えた思想のひとつとして、いわゆる自由主義神学が挙げられるであろう。
自由主義神学は英語でリベラリズム(Liberalism)と呼ばれ、現在のメインラインと呼ばれる多くのプロテスタント諸流派において受け入れられている神学である。しかし、プロテスタント諸教派の中にはそれを受け入れない、のみならずそれを徹底的に否定している教会も少なからず存在する。そして、プロテスタント諸教派における自由主義神学を巡る対立は、ほとんどお互いに受け入れらないほどまでに激化しているのである。(続く)
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